HD PENTAX-DA 35mm F2.8 Macro Limited
APS-Cで標準マクロ撮影が可能なLimitedレンズ。
コンパクトながら本格的な接写性能を持ち、多少特性の偏りはあるもののほぼオールマイティに使える。
smc版から新コーティングと円形絞り採用に加え、ファームアップで新機能も追加された。
| 長所 | 短所 |
| アルミ削り出しの金属外装 ポケットサイズの等倍マクロ フルサイズ使用可(マクロ域のみ・非公認) 電子式フォーカスリミッター対応 | ワーキングディスタンスが極端に短い AF音が大きく被写体が逃げやすい |
| おすすめの用途 スナップ / 旅行 / 昆虫 / 植物 / テーブルフォト / 複写 | |
画質
中央は開放から良好な解像感。中央だとF5.6〜6.3、周辺部だとF8〜11辺りが解像性能のピーク。F11より絞ると四隅も含む全域で解像力が低下する。Limitedの中では絞りによる解像性能の変化が大きくないレンズなので、ざっくり目安程度。
さすがにキレのいい単焦点に比べると全体的な解像力は高い方ではないが、中央は遠景でも開放から十分に精細。常用単焦点として厳しめに見ると2段以上絞っても周辺部にほんのり甘さが残るが、実用面で問題のない程度に解像する。
基本的には目立たないが、開放付近で軸上色収差が発生することがある。白黒パターンやコントラストの強い被写体では色づきが気になる場合もあるので、二段以上絞ると安心。倍率色収差や歪曲収差はほとんど見られず、マクロレンズらしい実直な描写傾向。
ボケ味は、基本的に開放から素直で癖は控えめ。条件によって玉ボケの輪郭が写真の中で浮く場合もあるが、二線ボケなどを過度に警戒する必要はないだろう。近接撮影では大抵絞り込んで使うので、なおのこと問題になる場面は少ない。円形絞りを採用しており、F5.6あたりまでボケの丸みが維持される。
HDコーティングの効果もあってか逆光性能は良好。高いコントラストで花や葉を撮っても鮮やかに発色する。
総評すると単焦点らしい解像感を発揮する近接撮影をベースに、絞れば遠景にもそこそこ対応できる良好な光学性能を持つ。悪目立ちするような収差が開放から少なく、DA Limitedの中でも安定感がある。
機能
なんといっても、被写体に吸い寄せられるかのようにどこまでも寄れる近接性能が特徴。
最短撮影距離は13.9cm、ワーキングディスタンスに至っては脅威の3cm。
前玉の繰り出し量が大きく、油断していると被写体に突っ込んでいくことも。SPコーティングが施されているので多少の汚れは気にならないが、フルサイズで使うとき以外は収納式フードを繰り出しておくとより安全。
AF速度はボディAF式のレンズとしては平均的で、特別速くはないがそれほど待たされることもない。マクロレンズというとピントリングの回転角が大きくAFが迷った時の待ち時間が長い印象があるが、DA35マクロはコントラストAFでも比較的待ち時間が短い気がする。遅いことは遅いので、特にライブビュー撮影時は備考欄後述のフォーカスリミッターを活用したい。
ボディAF式のレンズに共通する仕様として、動体追従はあまり得意ではない。マクロ撮影は被写界深度が浅く、風や姿勢によるちょっとした変化がピント位置に影響することも多い。そのため被写体認識とAF-Cで常時追尾できた方が歩留まりが良くなるのだが、PENTAXのマクロレンズはそのような撮影がやや苦手。逃げない被写体なら、三脚を使って風のないタイミングで撮れば良い話ではある。
マニュアル操作はおおむねちょうどいいトルク感。フードを収納していると摩擦でやや渋くなるので、フルサイズ使用時以外でマニュアルフォーカスを使うときはしっかりフードを展開したい。DA Limitedの共通仕様としてクイックシフトフォーカスにもしっかり対応している。
DA Limitedらしく携帯性も良好。同シリーズの単焦点レンズとしては最も大きいが、それでもフードつきのDA70と全長はほぼ変わらない。複数本組み合わせて持ち歩くのもまったくやぶさかではないサイズ感。
まとめ
マクロレンズだと思って使うとワーキングディスタンスの短さから使い道に戸惑うが「どこまでも寄れる標準レンズ」として捉えると無類の使い勝手を発揮する。開放F値が単焦点としては地味に見えるかもしれないが、近接ではむしろ絞りたい場面が多いほど。
コンパクトながら色収差や歪曲といった癖も少ないので、標準域が好きな人ならつけっぱなしの1本として有力候補。植物や(近寄っても逃げない)昆虫、猫、テーブルフォト、そしてスナップ全般とカバー範囲は広い。後述するフルサイズでの使用も面白いが、コンパクトなAPS-C機で標準画角を突き詰めるだけでも遊びがいがある。
DA Limitedは40mm、70mm、21mmと携帯性に特化したパンケーキレンズから揃えていったがDA35マクロはかなり汎用性が高く、初めての単焦点レンズはこれでも良かったなと感じた。
備考
カスタムイメージ冬野
HD版のDA35マクロはカスタムイメージSpecial Edition「冬野」のパートナーレンズ。
冬の冷たさを表現したハイキーかつシャープな画作りが特徴。
K-1、K-1II、K-3III、KFの対応バージョン以降のファームウェアで使用可能。
フォーカスリミッター機能
該当機種のファームアップで電子制御式のフォーカスリミッターも追加された。メニューの階層が深いので、多用するならコントロールパネルに登録するのがお勧め。カメラ上では切り替えても「Limit Near / Limit Far」としか表示されないので各モードの対応距離が分かりづらいが、DA35マクロの場合は撮影距離30cm付近が分岐点となっている。
フード
49mmフィルター用のねじ切りはスライド繰り出し式のフードではなく鏡筒本体側に切られている。ジャストサイズのフィルターであれば装着したままフードの展開・収納が可能。一方でステップアップリングを使用しているとフードは使用できない。
フルサイズ機での使用
最短距離〜至近距離の撮影ではほぼケラれず使用可能。
35mm広角マクロとして稀有なキャラクター性を発揮する。ただし虫の眼レンズではないので、撮影者やカメラの影が写り込みやすくなる。
マクロ域とは異なり、開放かつ1m程度の近距離〜遠景ではギリギリ周辺も解像しているが周辺減光が強くあまり実用的ではない。また周辺の像の乱れも顕著。F5.6まで絞れば、四隅は乱れるがレタッチ込みで使えないこともない。周辺減光の改善が見込めるのはF5.6までで、F6.3以降はイメージサークルの縁がくっきり写り込んで逆にケラれる。
HD PENTAX-DA AF REAR CONVERTER 1.4X AW の使用
FF換算75mm相当の画角で最大撮影倍率1.4倍の等倍超えマクロレンズとして使用可能。
絞り込んでも解消されない周辺の甘さは気になるものの、中央付近は実用的な解像度。
テレコンの副作用として、イメージサークルの拡大によってフルサイズ使用時のケラレがほぼ解消される。なお、単体のときとは逆に最短撮影距離付近でケラレやすくなる。最短ではイメージサークルのフチとセンサーが接しているような際どさで、手ぶれ補正をオンにしていると特にケラレが発生しやすい。
フルサイズ対応の標準マクロならDFA50のほうが無難な選択肢だが、HD版のDA35マクロにはカスタムイメージ冬野とフォーカスリミッター機能があるので完全な下位互換という訳でもない。
MACROとMacro?
「D FA MACRO 100mm」と「DA 35mm Macro Limited」でマクロの表記が異なるという件。
PENTAXではレンズ名の焦点距離より先につける「MACRO」と後半につける「Macro」を呼び分けているらしく、Macroのほうは「近接性能を突き詰めたら結果的に等倍マクロ仕様になった」ぐらいのニュアンスらしい。もちろん最大撮影倍率はきちんと等倍だが、複写のように厳密なマクロ性能が求められるシーンを想定して「MACRO」と棲み分けているものと思われる。なおPENTAXのフィルムデュプリケーターなどはDA35マクロも推奨レンズの中に含んでいるので、厳密なことを言わなければOKなのかもしれない。
Tokinaとの共同開発
共通の光学系を持つAT-X M35 PRO DXのニコンFマウント、キヤノンEF-Sマウント用が存在する。
基本的な仕様は似ているが、DA35Macroの方が一回りコンパクトで軽い。一方Tokina版はクイックシフトフォーカスの代わりにAF/MFを切り替えるクラッチ機構を備えており、フォーカスリミッターの切り替えスイッチもある。
比較
smc PENTAX-DA 35mm F2.8 Macro Limited
コーティング更新前の旧版。未所有なので光学性能については割愛。
光学設計やデザインはほぼ共通で、HDコーティングと円形絞りを新たに採用した。
ファームウェアの更新でカスタムイメージやフォーカスリミッターも追加されたので、お勧めするならやはりHD版。基本性能が一緒なら安いほうがいい、あるいは光条が綺麗に出てほしい人にはsmc版もあり。
smc PENTAX-DA 35mm F2.4 AL
smc PENTAX-FA 35mm F2 AL / HD PENTAX-FA 35mm F2
smc PENTAX-FA 31mm F1.8 AL Limited / HD PENTAX-FA 31mm F1.8 AL Limited
コンパクトな30mm台のレンズがやたらと豊富なPENTAX。smc版のFA31以外未所有。
いずれもクイックシフトフォーカスには非対応。
DA35ALはDA35安とも呼ばれる通りAPS-C用の標準撒き餌レンズ。未所有なので詳しい光学性能については割愛するが、最短撮影距離0.3mはマクロとまではいかずとも十分実用的。フルサイズ対応のFA35と光学系が共通らしいが、いずれもプラ鏡筒が気になる人は気になるかも。
FA31は携帯性に対する描写性能が頭ひとつ抜けており、写真の臨場感はふた回り上手。周辺減光や独特な収差のある開放側の味と絞り込んだときのハイレベルな解像力で二度美味しい。実はフードを除いた前玉までの長さはフィルター1枚分程度しか変わらない。開放からパープルフリンジなどの癖がないレンズが好みの人はDA35マクロがいいかもしれない。
smc PENTAX-DA 40mm F2.8 Limited
画角の近いDA Limited同士の比較。焦点距離5mmの差はそれなりにある。
DA40は抜群の携帯性だが、FF換算61mmと中望遠寄りの画角で常用にはやや狭い。最短撮影距離も短くはないので、テーブルフォトでものけぞって撮る場面がある。DA35マクロは意図せず寄り切ってしまう場面がまずないので、構図ありきで距離感を決めても必ずピントが合う安心感が強み。
被写体を風景から切り取るようなスナップでは中望遠寄りの方が都合がいい場合もあるので落ち着いた平坦なパースで淡々と撮影したい人はDA40が、もう少し広い画角が好みで被写体との距離感をコントロールする表現をしたい人はDA35マクロが楽しいかも。
smc PENTAX-D FA MACRO 100mm F2.8 WR
Limited的な意匠も取り入れた等倍撮影対応の中望遠マクロ。
ワーキングディスタンスが確保でき、35mmほど被写体に寄らないのでそれほど絞り込まなくても画になるところも扱いやすい。焦点距離100mmの等倍マクロレンズとしては携帯性も非常に高く、スナップ〜風景用の中望遠単焦点にもなって潰しが効く。FREEシステムのおかげか遠近ともに高い解像性能を発揮する。
最大の欠点である開放のパープルフリンジはHD版で解消され、簡易防滴から防塵防滴に格上げされた。さらにHD版はフォーカスリミッター機能にも対応している。
フルサイズで使う前提なら35mmと100mmの差は大きく、主観的な視野の広角マクロ or 俯瞰で客観的に捉える中望遠マクロかで好みが分かれるところ。
smc PENTAX-D FA MACRO 50mm F2.8
フルサイズ対応の標準マクロレンズ。未所有なので描写については割愛。
デジタル対応レンズとしては最初期にあたる2004年発売の製品で、外観にも時代を感じる。
そこそこコンパクトで画角もスナップ向き。機能面はDFA100マクロの初期型(WR化される前)と同じ仕様で、絞り環とフォーカスクランプを採用している。WR版やHD版は出ておらず、フォーカスリミッター機能にも非対応。
他社のAPS-C用マクロレンズ
APS-C専用の等倍マクロレンズというとニッチな印象もあるが、製品としては意外と出ている。Canon以外は現行製品(2024年8月時点)。
・Nikon / AF-S DX Micro NIKKOR 40mm f/2.8G
・Canon / EF-S 60mm F2.8マクロ USM
・SONY / E 30mm F3.5 Macro
・FUJIFILM / XF30mmF2.8 R LM WR Macro
・FUJIFILM / XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macro
ネットで調べた情報なので定かではないが、Nikonの40マクロは強い周辺減光と中〜遠景でのケラレを許容すればフルサイズで使えないこともないらしい。イメージサークルの大きさ的にはPENTAXの35マクロと似た使い勝手だと思われる。
他社製品は静粛性の高いレンズ内モーターが標準装備となっている中で、DA35マクロのAF追従精度や極めて大きいギア音は用途によって大きいマイナスとなる。一方、近接域限定ながらフルサイズ用広角マクロとして使える点は貴重なキャラクター性となっている。クロップしても標準画角なのでお散歩スナップとの相性が良い。







