HD PENTAX-D FA 150-450mm F4.5-5.6 ED DC AW
フルサイズ機と同時期に発売された、現行では最長焦点距離となる重量級望遠ズーム。
スペック上の値に際立った特徴はないが、単焦点未満ズーム以上の高水準な描写力を持つ。
特にボケ味が良好で、背景が煩雑になりやすいシチュエーションでも威力を発揮する。
| 長所 | 短所 |
| 現行最長の望遠レンズ ズーム全域で安定して優れた画質とボケ味 複数の機能に対応したAFボタン 防塵防滴仕様 | 重い AFボタンが無効化できない |
| おすすめの用途 風景 / 野鳥 / 飛行機 / イベント / スポーツ / 天体 | |
画質
スターの名は冠していないものの、中堅クラスの望遠ズームより格上の描写力。
ズーム域や被写体の距離による画質への影響は少なく、開放から安定感のある描写。絞りは解像力を高めるためというより、被写体に被写界深度を合わせるために使うことが多い。F5.6でも中央〜周辺の範囲はよく解像し、F8〜11程度に絞り込むと周辺にかけてよりシャープに。切れ味はサンヨンの方が上だが、逆光耐性やコントラストも優秀で立体感のある描写。
色収差も開放からよく抑えられており、特に軸上色収差は見つけるのが困難。等倍サイズだと周辺部で僅かな倍率色収差が見られるが、後補正で簡単に解消できるもので無視できるレベル。コントラストが明瞭な被写体や逆光などの悪条件に強い。
ボケ味は良好。圧縮された背景にありがちな煩雑な情報量をF4.5-5.6でも容易に溶かすことができる。物理的にはあまり寄れないが最大撮影倍率は0.22倍とそこそこ便利。前後ボケの空間に昆虫や小動物が差し込まれたような望遠ならではの画作りが楽しい。
解像力の高さ故にある程度画素数のある機種だと手ブレが目立ちやすい。望遠端の手ブレ補正ON(PENTAX KP/24MP/5段5軸補正)だと1/125sでも止まることもあるが1/500sでも安定しないこともある。また、テレ端開放のピント面はかなり薄いのでボディ側のピント調整はよく追い込んだほうが良い。
機能
ズームレンジ
3倍という無理なく扱いやすい倍率。フルサイズでは中望遠的な風景撮影から野生動物の記録まで対応できる。APS-CではFF換算で約690mm相当の超望遠となり野鳥撮影も支障なくこなせる一方、広角端も230mm相当と長くなるため望遠専用の運用となる。サブのコンデジ等があると当日のフィールドの記録用に重宝する。
AF性能
AFは爆速とまではいかないが、通常の用途では困ることのない速さ。激しく動く被写体をAF-Cで全コマ追従し続けるには力不足感も否めないが、枝に数秒止まっている小鳥にピントを合わせる分には無理のない速度。ピントの薄さ故にボディ側にも高いAF精度が要求される。
ただし450mmにもなるとフレーミングが安定しないので、レンズ内手ブレ補正非搭載による扱いにくさ、小さな被写体に測距点を合わせる難易度の高さは他のレンズより際立っている。
機能性
FULL / 2-6m / 6-∞m のフォーカスリミッターがあり、柵越しの動物園など特定の状況でAFの迷いを軽減できる。しかしながら、たとえば数十m先の小鳥が枝葉に遮られているようなケースだと障害物となる枝が都合よく6m以内にあるパターンは少ない。限定的ながら一定の効果がある。
鏡筒にある3箇所のボタンは AF / AFキャンセル / AFプリセット いずれかの機能をスライド式スイッチで選択することができる。鏡筒が深くフォーカスリングを回し切るのは大変なので、プリセットAFを任意の距離で設定しておくとたまに便利。正直に言えばこの機能はほとんど使っておらず、しかもボタンを無効化する選択肢がないので稀に誤作動させてしまうことがある。純粋にレンズ側面のAFボタンを必要とする人以外は持て余す機能となっており、AFモード切り替えなどをカメラ側でカスタム設定できれば重宝しただけに勿体ない。
AW(防塵防滴)仕様だからかWR(簡易防滴)タイプのレンズより密閉度が高く、全体的に堅牢な造り。そのためズームロックが不要なのではと思えるぐらいにズームリングが固く、鏡筒の太さも相まって構え方によってはズーム調整が難しいことも。
インナーズームではないので鏡筒は伸び縮みし、そのためか使っていると少量の埃は入ってくる(後玉経由でボディ内の埃を吸い込んでいる可能性も十分あるが、それもやはり鏡筒が伸びることに起因する)。ただ、同じくインナーズームではない簡易防滴の望遠レンズ(DA55-300PLM)に比べると埃は入りにくいという体感。いずれにしても屋外使用時の安心感は高く、価格と重量に見合った満足感のある品質。
携帯性
流石に重量級のレンズなので、ボディ込みで持ち歩くならそれなりの運搬手段を考える必要がある。
ボディつきだと一般的なショルダーバッグやトートバッグには収まらず、サイクリングにおいてもたすき掛けやクイック式のホルスターで運用するのは厳しい。レンズ単体かつ収納状態であればPeak Design EVERYDAY SLING 6Lにギリギリ収納可能。10Lであればボディ込みフード逆付けで収納できる。
まとめ
クオリティに妥協のないPENTAX超望遠ズームの決定版。
望遠レンズの用途的に動体性能を追求してほしいところだが、AF速度も大抵の被写体には対応可能。距離が目まぐるしく変化するような速い or 近い被写体だと歩留まりに苦労するかもしれない。
望遠端F5.6は大型望遠ズームとして標準的な明るさだが、発売前のメーカー担当者の発言によると「他社のF5.6より明るめの設計」とのこと。望遠ズームにこれより暗いものが多い中で見ると、シャッタースピードや高感度ノイズを犠牲にすることなく撮影できるのは利点。
PENTAXの手ぶれ補正スペック値は85〜135mmの中望遠クラスのレンズで試験された数値となっている。超望遠におけるボディ内手ぶれ補正は結構歩留まりが下がるので、なるべく5段以上の補正に対応したボディが欲しい。
メーカーに無限の開発予算があればFA☆600/4やFA☆250-600/5.6の復刻をと言いたいところだが、出たとしても手持ち撮影は無理そう。
備考
HD PENTAX-DA AF REAR CONVERTER 1.4X AW の使用
装着すると210-630mm F6.7-8.0の望遠ズームとして運用できる。イメージサークルがAPS-Cサイズになるが、画角は現行のPENTAX製品で実現できる望遠システムとして最長のFF換算964mm相当に。
画質は基本的に問題なし。望遠端かつ開放F8.0はソフトな傾向で、ボディの画素数・被写体の距離にもよるがマスター単体のトリミングの方がシャープになることもしばしば。1段絞ってF11ではかなり改善され、マスター単体のトリミングより情報量が増す。
960mm相当で開放F8ともなるとシャッタースピードの確保が課題で、特に1段絞って使う場合は筋トレ、電子シャッター使用、被写体の明るさなど複数の条件を確保して本領が発揮される。とはいえ元々の画質が良く、並の望遠レンズにテレコンをつけた場合に比べると開放でも微々たる劣化なので難しく考えずにテレコンをつけたりつけなかったりするとよい。
フードの小型化
望遠レンズだけあってフードの有無、順付け/逆付けによって携帯性が大きく変化する本製品。
フード逆付けならPeak Designのスリングバッグ(10L)にボディごと収まるのだが、そのままではズームリングを回せないので撮影時はフードの付け直しが必要になる。そこで速写性をより重視し、フードなしで運用することとした。そうなるとキャップも省略したいところだが、フィルターねじとほぼツライチの前玉がバッグの内壁に擦れそうなのが気になった。
最終的に、ノーブランド品の86mm径ねじ込み式フードを導入した。
広角用なので深さは1.5cm。遮光効果はほとんど期待できない。前玉保護の効果も最低限。
しかし平らな地面に置くぐらいなら問題ないし、もともと逆光に強いので案外短いフードでも困らない。
このレンズに小型化需要があるのかは謎だが、フードを替えただけで非常に扱いやすくなったので結構アリ。
後継 D FA 100-400mm F4.5-5.6 SR / D FA 150-600mm F5-6.3 SR ?
2021年9月に公開された特許情報。
特許が出たから開発されるとは限らないし特許が出ないまま開発されるものもある。
100-400ズームが出るとしたら150-450と置き換わる形になりそう。
SR内蔵に加えて協調補正、軽量化まで実現されたら買い替えを検討するかもしれない。
150-600の方は昔の☆250-600/5.6を思わせる焦点距離。
ゴロゴロの焦点距離を超えつつパープルフリンジも解消されればサイズや重さは許容するユーザーも多いだろう。
PENTAXのスターレンズは高画質に加え通しF値が必須条件らしいので、どちらもノーマル扱いになりそう。
2023年まで公開されていたロードマップには影も形も無かったので、いまのところ製品化される可能性は低い。
比較
SIGMA APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM
DFA150-450の登場までは超望遠ズーム筆頭だった重量級レンズ。重さは2kg前後で望遠端の焦点距離も近い。しかし方や10倍、方や3倍のズーム倍率の差は画質の差として如実に現れる。特に望遠端のヌケやコントラストはDFA150-450がふた回り良い。
標準から超望遠までをカバーする高倍率とレンズ内手ブレ補正によるファインダー像の見やすさはKマウント用レンズとしては唯一無二。望遠域のみが必要な場合はDFA150-450の方が高画質で満足度が高く、純正のAFテレコンにも対応している。
50-500のHSM駆動のAFは150-450のDCよりやや速く、AFが迷ったときは無限遠からの復帰でスピードの差を感じる。またDFA150-450とボディ内手ブレ補正より50-500のレンズ内手ブレ補正の方が歩留まりがいい気がするが、単に50-500の望遠単の画質が緩めなので微細な手ブレが分かりにくいだけかもしれない。フルサイズで使用する場合、K-1/K-1IIのマウント上部に傷がつく問題もあるのでその点も検討材料。
望遠端運用がメイン、ズーム全域の画質、防塵防滴重視 = DFA150-450
幅広い被写体への対応力、ファインダー像の安定感、価格重視 = SIGMA50-500
smc PENTAX-DA★300mm F4 ED[IF]SDM Trial
PENTAXの解像番長。発売時期に7年もの差があるが、シャープな描写力はいまだ一線級。
同じボディでDA★300の450mm相当クロップとDFA150-450の望遠端で比較するならDFA150-450の方がより細部を捉えられる。しかし300mmからクロップが不要な被写体の場合、DA★300の方が見ごたえのあるキレの良さ。
テレコンありのDA★300と素のDFA150-450では後者のほうが安定した画質だが、前者も並のレンズに劣らない描写。テレコン込みでも1.2kgという可搬性の良さも魅力。
AFが遠景に抜けやすいような場面では150-450がフォーカスリミッターのおかげで迷いにくくやや優位。断言できるほどの差ではないがAF速度は150-450の方が若干速い気がするのと、300はSDMの消耗や個体差があるぶん不利。非リング型SDMの耐久性は初期ロットに比べると改善されているらしい。
ズームの汎用性、より遠い被写体への対応、AFの耐久性重視 = DFA150-450
携帯性、1段分の明るさ、比較的近い被写体の解像感重視 = DA★300 (+テレコン)
HD PENTAX-DA 55-300mm F4.5-6.3 ED PLM WR RE
PENTAX最軽量の望遠ズーム。DFA150-450と並べると2段階進化したポケモンのような落差がある。
焦点距離の差を無視した解像性能としては
DA★300 > DFA150-450 ≧ DA55-300PLMという並び。
シチュエーションによっては上位レンズに然程劣らない描写を見せるのがDA55-300PLM。
DFA150-450はそこに明るさ、より自然で大きなボケ、1.5倍の射程が上乗せされる感じ。
DFA150-450はピントの薄さ故にAF速度と精度がもっと欲しくなる場面が多いのに対し、DA55-300PLMはステッピングモーターの特性と被写界深度がそこそこあるおかげで歩留まりが良い。また森を散策しながら野鳥を探すときなど、鳴き声を観測してから長時間構えても疲れず振り回しやすいDA55-300PLMの方がシャッターチャンスを逃さない感じもする。
表現の幅や画質の絶対値においてDFA150-450が上回る一方、DA55-300PLMは価格1/4、重量1/5ながら画質は並以上というバランスブレイカー。前者でしか撮れない画を優先するか、手軽さと汎用性を取るかの選択となる。
クオリティ重視でより遠い被写体をシャープに撮りたい = DFA150-450
散歩感覚で気軽に長時間使える望遠ズームでベストな総合性能 = DA55-300PLM
他社の競合製品
| マウ ント | 発売 | 初値 | 質量 | 最大径 長さ (mm) | 構成 枚数 | 特殊硝材 | 手ブレ 補正 | 防塵 防滴 | |
| EF 100-400mm F4.5-5.6 L IS USM | EF | 1998 | 希望小売価格 ¥273,000 | 1,360g | φ92 193 | 14群 17枚 | SUD×1 蛍石×1 | 2段 | - |
| AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6 G ED VR | F | 2013 | ¥248,899 | 1,480g | φ95.5 203 | 12群 20枚 | ED×4 SED×1 | 4段 | - |
| EF 100-400mm F4.5-5.6 L IS II USM | EF | 2014 | ¥262,405 | 1,570g | φ94 193 | 16群 21枚 | SUD×1 蛍石×1 | 4段 | ◯ |
| HD PENTAX-D FA 150-450mm F4.5-5.6 ED DC AW | K | 2015 | ¥248,829 →194,020 (2024.11) | 2,000g | φ95 241.5 | 14群 18枚 | AD×1 ED×2 | - | ◯ |
| AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6 E ED VR | F | 2015 | ¥153,089 | 2,090g | φ108 267.5 | 12群 19枚 | ED×3 | 4.5段 | - |
| FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS | E | 2017 | ¥282,248 | 1,395g | φ93.9 205 | 16群 22枚 | SED×1 ED×2 | 4段? | ◯ |
| RF 100-500mm F4.5-7.1 L IF USM | RF | 2020 | ¥331,650 | 1,370g | φ93.8 207.6 | 14群 20枚 | SUD×1 UD×6 | 6段 | ◯ |
| RF 100-400mm F5.6-8 IS USM | RF | 2021 | ¥81,450 | 635g | φ79.5 164.7 | 9群 12枚 | ASP×1 UD×1 | 5.5段 | - |
| NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S | Z | 2022 | ¥314,820 | 1,355g | φ95 241.5 | 20群 25枚 | SED×2 ED×6 | 5.5段 | ◯ |
超望遠レンズと一口に言っても50-500/60-600だったり150-600だったりF4通しの大口径だったり種類は様々。100-400mm F4.5-5.6相当のレンズがDFA150-450と最も近いジャンルになるのでそれらとの比較。
望遠レンズのラインナップが少ないためかPENTAXは400・500mmクラスを兼ねるかのような450mmという珍しい焦点距離をカバーしており、それもあってかやや重い点も特徴といえば特徴。手ブレ補正内蔵ボディということもありレンズ内手ブレ補正を搭載していない点も他社の基準で言えば珍しく、しかしその2年後にはソニーから5軸協調補正を実現したGM超望遠も登場している。望遠域ではレンズ+ボディの協調補正が当然のようになった現在の視点で素直に言えば、DFA150-450にレンズ内補正を搭載して欲しかったところではある。
価格に関してはDFA150-450は初値がギリギリ20万円代前半。このクラスのレンズは30万円前後がざっくりとした相場なので相対的に見ればお得感がある。相場より明らかに安いNIKKOR200-500はF5.6通しで広角側がわずかに暗い点、RF100-400も気軽さを重視した軽量レンズである点に留意が必要。
リスト作成時点で新品が入手可能なレンズはどれも価格を維持しているか若干の値上げとなっているところ、DFA150-450は5万円ちょっと値下がりしている。ユーザーの懐的にはお得といえばお得なのだが、儲かっているか少々心配ではある。










