HOLGA HL-P 60mm F8

エーパワー社が2011年に発売したAPS-C用のトイレンズ。
有名なトイカメラ、HOLGAのレンズを各種マウント向けに対応させた製品。
センサーの解像力を完全に無視したゆるゆるの解像とブラックコーナーによる独特な描写が売り。

長所                  短所                  
圧倒的に軽量コンパクト
プラレンズとBCエフェクトの独特な描写
BCフィルター撤去でフルサイズ対応可
解像力は無い
すごく暗い(F8固定)
フォーカスリングが固い


画質

元がトイカメラ用レンズなので、そもそも高画質を求めて選ぶレンズではない。終了。

と言ってしまえばおしまいなのだが、語弊を恐れずに言うとレンズの味が100%でシャープネスとかコントラストとかの次元ではないというべきか。ピントがどこに合っているのかも曖昧なレベルなので、普通のレンズは全く比較対象にならない。

一方でBC(ブラックコーナー)エフェクターは派手に効き、構図ど真ん中の被写体を強制的に印象付けるような画作り。プラレンズといっても黒は意外に締まり、階調の少ないビビッドな画には妙なパンチがある。周辺は引き伸ばされたような像の乱れや色収差が目立ち、記録写真向きのレンズとはとにかく真逆の志向。

普通のレンズで撮影した写真にこれらの効果を後付けできるかといえばそうでもないので、面白さ、不完全さに振った写真が量産できるという意味で稀有な製品。


機能

絞りがF8固定で暗く、屋外でも光量不足になることがある。
狭い画角も相まって室内には不向き。

写ルンです(F10固定)に慣れている人ならあまり困らないかもしれないが、HL-PはFF換算約90mmと結構な望遠なのでスローシャッターでまともに写すのは困難。フラッシュを活用するか、幸か不幸か高感度ノイズがフィルムっぽい粒状感として写ることもあるので諦めて高ISOで撮り切るのもひとつの手。

近年だとPENTAX 17で話題になったゾーンフォーカス型の合焦方式。距離ピクトグラムは

・1人 = 0.9m
・2人 = 2-3m
・6人 = 6m
・山 = 無限遠

にそれぞれ対応している。

フォーカスリングはメリメリと渋く、かといってクリック感もないのですばやい操作には不向き。ファインダーでピントの山を掴むのはかなり困難。

60mm/F8ということで被写界深度は深く、レンズの解像性能的に許容錯乱円の閾値も最短撮影距離以外ではあってないようなもの。深く考えず3-6mあたりに固定してパシャパシャ気軽に撮るのが楽しいかもしれない。


まとめ

当時何の気無しに買ったレンズで定価はたったの3,150円だった。Canon用やNikon用は現在でも新品が手に入るが、PENTAX用は入手できる機会が少ない。貴重だったり高値がつく品かといえばそんなこともなく、普通にあんまり売れなかったので玉数も少ないということらしい。

性能を求めるレンズではないので性能面でさんざん斬ったが、良くも悪くもユニークな存在なので手放す予定はない。アダプターをつけた富士フイルム機でフィルムっぽく撮るのも楽しそうだが、PENTAXのカスタムイメージで遊ぶのも乙。クロスプロセスとかどうでしょう。

余談となるがレンズの型番はHL-P = ホルガのペンタックス用という意味で、キヤノン用ならHL-C、ニコン用ならHL-Nとなる。大変検索しづらい。


備考

全てが開き直った公式カタログ語録

・幸か不幸か、あなたのカメラでも使えてしまう。他力本願の7マウント/8モデル対応。
・装着した際、多少レンズがガタつくことがありますが、それくらいで驚かないでください。
・マウント部分から光線漏れが起こる場合があります。
・HOLGAらしい味のうちとしてお楽しみいただくか、パーマセルテープで塞いで対応してください。
・先行発売のHL-NとHL-Cが好評だったので追加発注したら勝手にBCエフェクターが搭載されていた!
・BCエフェクターで(中略)暗い場所にいる黒猫を撮影すると、こうなります。(猫が全く見えない画像)
・BCエフェクターを望まない場合は、マイナスドライバー等で剥がすことができます。

小改造1:フルサイズ対応(BCエフェクターの撤去)

前項でちらっと触れているが、BCエフェクターは剥がすことができる。

エフェクター外周部にマイナスドライバーが入る隙間はないので、どっちかというとカッターの先端やコンパスの針でめくるイメージ。エフェクターを固定する接着剤は緩いのでまあまあ綺麗に剥がれる。再利用したい場合は適切な接着剤で再度くっつけるといいらしい。

エフェクターを外すと、フルサイズでもケラレず普通に60mmの単焦点レンズとして使うことができる。スペックからしてHOLGA 120シリーズのレンズをそのまま使ってるっぽいからイメージサークルに余裕があるのも納得。

APS-Cより外の範囲は結像が甘く収差も激しいが、BC除去前に比べるといたって普通に画質の緩いレンズに。言い換えれば凡庸な写りになるが、明るさも増して使いやすくはなるのでカスタムイメージで味付けする素材として使う手もある。

小改造2:フルサイズ用自作BCエフェクター

パーマセルテープに4.7mm程度の穴を空けてエフェクターがあった位置にペッと貼ってみたら案外それっぽい写りになった。やっぱり光量落ちはあった方が面白い。

小改造3:マクロ性能の強化

60mmの準標準レンズとして使うには最短撮影距離0.9mはやや長すぎる。

レンズの撮影素子側には1箇所だけボルトが刺さっており、これは直接パーツ同士を結合させるのではなくピントリングが回りすぎて脱落するのを防止するストッパーとして機能している。このボルトを取り除くと本来より40°ほどヘリコイドの可動域が広がり、20〜30cm程度短い距離にピントが合うようになる。もちろん45°まで回すとヘリコイドが脱落する。

元設計が40°も回転角度に余裕を持たせているのは、嵌合部が浅いと光が漏れ入るからでは?という懸念も一応ある。とりあえず実写で特に問題はないので、ストッパーボルトの受け座の位置を弄くればまともな標準レンズとして使えそう。

多種多様?な各種コンバーター

・HT-25 (2.5倍テレコンバーター)
・HW-05 (0.5倍ワイドコンバーター)
・FEL-HL (フィッシュアイコンバーター)


比較

比較対象なし。刺さる人はQシリーズのユニークレンズもいいかもしれない。


作例

PENTAX K-01 1/8s F8 ISO3200 60mm

PENTAX K-01 1/50s F8 ISO1600 60mm
カスタムイメージ:銀残し

PENTAX K-01 1/13s F8 ISO6400 60mm
カスタムイメージ:クロスプロセス

PENTAX K-01 1/60s F8 ISO6400 60mm
カスタムイメージ:クロスプロセス

PENTAX K-01 1/30s F8 ISO3200 60mm
カスタムイメージ:クロスプロセス

PENTAX K-01 F8 60mm
カスタムイメージ:クロスプロセス
インデックス機能使用

PENTAX K-1 Mark II 1/200s F8 ISO800 60mm
カスタムイメージ:クロスプロセス
BCエフェクターなし

PENTAX K-1 Mark II 1/60s F8 ISO800 60mm
カスタムイメージ:リバーサルフィルム
BCエフェクターなし