K-3 Mark III / Tips
K-3 Mark IIIはハード的にもソフト的にも従来から大幅に刷新され、AF性能や画質といった分かりやすいスペック以外にも様々な改良が施されている。購入前に体験会とフリートライアルで2度触る機会があったが、使い込んで良さが分かるまで時間がかかる改善点も多かった。
スペックシートに直接書かれないアップデートの紹介記事。
K-3 Mark IIIのレビュー記事はこちらから。
ユーザーAF 改良
測距点範囲や追尾の有無をひとまとめに登録し、スマートファンクションやFxボタンで呼び出せるようになった。
動体撮影を重視したK-3IIIらしい改良点。K-1やKPではダイヤルで任意のモードを選択する方式のみだったが、3つのAFモードと7つの測距点モードをダイヤルで切り替える操作は効率的ではなかった。細かい点だが、撮影者から見てAFモードを操作するダイヤルは右寄り、測距点モードを操作するダイヤルは左寄りにあるにも関わらず液晶上の表示は逆。個人的には直感に反する操作感で、対応ダイヤルの変更や使わないAF設定選択肢の無効化などカスタム枠が欲しいと感じていた。
任意のAF設定をボタンひとつで呼び出せるユーザーAFにより、上記の問題は解決した。スマートファンクションダイヤルの場合は5つまで割り当てることができ、逆に2つに絞ることも可能。
USERモードBOX 改良
従来:保存可能なUSERモード設定数5、割り当てダイヤルの入れ替え不可
現行:保存可能なUSERモード設定(BOX)数10、割り当てダイヤルの入れ替え可能
GRIIIから引き継がれた、文字通りUSERモードを一旦保管しておく「保管庫」のような機能。
従来であればUSERモードを設定するにはU1〜U5のモードダイヤルに切り替えたのち、全ての設定値を任意のものに変更してユーザーモード登録の操作をしていた。K-3IIIにおいても機能の基本は同じようなものだが、従来の方法では5つ以上のユーザーモードを登録するためにはどれかひとつを消去する必要があった。それだけではなく、たとえばU1〜U5の中でも一等地となるポジションに新しい設定を加えたいとき、もともと一等地にあった設定は別のユーザーモードダイヤルで手動で再現して登録し直す必要があった。
BOXという設定情報の保管庫ができたおかげで登録できる設定数が増えただけではなく、上記のようなケースでもダイヤル番号間を移動させたい設定を一度BOXに控えたり、その日の撮影用途に応じて簡単に内容を入れ替えることができるようになった。
シンプルな改善点だが、使ってみないと便利さが分からない機能でもあるので紹介。
動画撮影時の光学式手ぶれ補正対応 改良
従来のPENTAXのShake Reduction(SR)は電子シャッター使用時・動画撮影時は使用不可という制約があった。K-1IIまでの機種では、動画撮影モード用としてMovie SRという電子式手ブレ補正が採用されていた。一般的に、電子式手ぶれ補正は光学式手ぶれ補正に比べると画質劣化や残像を引き起こしやすい。K-3IIIではSR駆動音の静粛性が向上し、動画撮影時にも使えるようになったとのこと。
電子シャッター使用時の手ぶれ補正対応 改良
SR改良の副産物なのか、電子シャッター使用時にもSRが使えるようになった。従来だと、電子シャッターを選択した場合SRは強制的にグレーアウトして有効化できない仕様だった。電子シャッターは手ブレ回避のために用いることも多く、この仕様のために中途半端なものとなっていたが改善された。
流し撮りモードも追加されたりと改良点が多いのでSRIIIと銘打って宣伝しても良かったのではないだろうか。
なお電子シャッター自体は発売時点で非対応だったが、ファームウェアver.1.10で追加されている。
光学ファインダー撮影時の電子シャッター 改良
LV撮影時のサイレントシャッター 改良
実はKPの時点でほぼ同じ仕様が採用されていたが、若干改良されている模様。
欲を言うならフリッカー低減機能が加わると尚良し。
1) K-1の電子シャッター
ファームウェアver1.30でLV撮影時の電子シャターが選択可能となった。しかし ①光学ファインダー撮影時には電子シャッターを選択できない ②LV撮影時にESを使用すると撮影終了時になぜかシャッター音が発生するという問題があった。撮影後、クイックビュー表示のタイミングでセンサー面をシャッターで保護するシーケンスが組み込まれているのかもしれない(K-1でクイックビューをOFFにしてもこの現象は発生する)。
2) KPの電子シャッター
シーケンスが見直されたのか謎のシャッター音は解消され、LV撮影時はサイレントシャッターが使用可能となった。ただし、メカシャッター使用時に比べてクイックビューの表示時間が極端に短くなる現象が発生する。またKPでは光学ファインダー撮影時にも電子シャッターが使用できるようになり、K-1における①②の問題が改善された。光学ファインダー使用時は普通にシャッター音が発生する。
3) K-3IIIの電子シャッター
ファームウェアver1.10で電子シャッターが選択可能となった。KPと同様にLV撮影時はサイレントシャッターとなり、また、光学ファインダー撮影時にも電子シャッターが使用可能。前項で述べた電子シャッター使用時の手ブレ補正対応に加え、クイックビューの表示時間もメカシャッター使用時と変わらなくなった。KPより更に改良されている。
| K-3II | K-1II | K P | K-3III | |
| 電子先幕シャッター | - | - | - | - |
| 電子シャッター(OVF使用時) | - | - | ◯ | ◯ |
| 電子シャッター(LV使用時) | - | ◯ | ◯ | ◯ |
| サイレントシャッター(LV使用時) | - | - | ◯ | ◯ |
| ES使用時の手ブレ補正 | - | - | - | ◯ |
| ES使用時のクイックビュー表示 | - | 短い | 短い | 通常 |
過去の機種で電子シャッターと手ブレ補正が併用できない理由についての仮説
2006年のかなり古い記事になるが、ITmediaNewsのインタビューでK100Dに初めて搭載された手ブレ補正機構の詳細が述べられている。K100Dの手ブレ補正が動作するタイミングについても言及されており「ボディ内蔵式の手ブレ補正はシャッターボタンを全押ししてシャッター幕が開く瞬間まで動作させる必要がなく、全押しした瞬間に動作させることで消費電力を節約している」という主旨の発言がある。
また「通電するまでセンサーユニットは可動範囲の下方向にあり、シャッターボタンを全押しすると真ん中に移動し、手ブレ補正がオンの場合はそこから必要な分センサーの位置を動かしている」という旨の説明もあった。そこで、K-3III以前の機種ではK100Dと同じシーケンスが組み込まれており、シャッター幕の開閉を伴わない電子シャッターでは手ブレ補正の挙動に不具合があったのでは?と個人的に推察してみた。
しかしK-1IIのライブビュー撮影ではシャッターボタン半押し中からSRが稼働しているように見えるし、そもそもライブビュー機能を搭載していないK100Dと最近の機種ではSRの仕組み自体変わっていてもおかしくない。多分もう少し複雑な理由からK-1、K-1II、KPでは電子シャッターとSRの併用を断念しているのだと思われるが、仮説のひとつとしてメモしておく。
測距位置拡大 改良
地味ながら便利になったと感じる機能。
測距点オート選択で撮影し、クイックビューや再生モードで確認する際「撮影時に使用した測距点」の位置をもとに拡大できる。撮影直後の確認は十中八九ピントが合っているか、被写体がブレていないかの確認なので測距位置をクローズアップするのは合理的。
シングルAF等では普通に真ん中が拡大される。その場合は液晶の任意の位置をダブルタップして拡大すると便利。
Image Syncからタイマー設定ができる 改良
気がつくまで1ヶ月半かかった。マジか!!
一言で言うとスマホからのリモート撮影でタイマーが使えるようになった。
これまでの機種で撮影者込みの記念写真を撮る場合の手順は3通りあった。
・シャッターを操作している手元(スマホ)をうまいこと隠す
・別売リモートコントロールの3秒タイマーを使う
・普通に12秒タイマーをセットして走る
いや、スマホアプリがあるんだからリモート操作でタイマー撮影すればいいじゃん!と言いたくなるが、なぜかこれまでの機種ではそれが出来なかった。アプリからドライブモードを変更することは勿論出来ないし、カメラをタイマー設定にしてからWi-Fi接続すると「1コマ撮影に設定してください」と丁重にお断りされる。カメラ側のファームウェアがそういう機能を想定した作りになっていなかった模様。
K-3IIIではリモコン(即時/3秒)、セルフタイマー(12秒/2秒)の設定が選べるようになった。
もっと早く実装して欲しかったが、普通に喜ばしい改良点。
RAW一括現像 変更
従来:再生モード > 十字キー▼ > RAW展開 > 複数画像選択 or フォルダー選択
現行:再生モード > 後電子ダイヤルで縮小 > 複数枚表示 or フォルダー表示でAE-L > RAW現像
フリートライアルでK-3IIIを2週間試用したとき「あれ?なくなったのかな」と思ったのがRAWの一括現像。筆者は「RAWで撮影→旅先でアップしたいデータだけカメラ内で選択・仕上げ→JPEGのみ表示する設定のImage Syncアプリから現像後のデータを抽出」という工程をよく行う。
初めからRAW+JPEGで撮影してもいいのだが、Image Syncアプリではサムネイルの解像度が粗く選別しづらいという理由がひとつ目としてある。そして「これはカメラ内現像でちょっと弄りたい」という写真があったとき、ひとつのRAWに対して2点のJPEGデータが発生してしまうことになる。被りの2枚の片方を大量のJPEGから選び出すのは地味に時間がかかるので旅先だとしたくない、というのがふたつ目の理由となる。
カメラの液晶で16〜20枚程度表示しながらRAW現像したい画像をポチポチ選択してJPEG出力すればアプリの操作は表示されたサムネイルを全選択してDLボタンを押すだけとなる。一括選択はK-3IIIでは上記の操作方法に変更となった。拡大表示画像では "[AE-L]画像操作" というヘルプが表示されるのだが、縮小表示だとこれがなくなる。
しばらく使い込んで、縮小表示画面でもAE-Lで画像操作メニューを呼び出せることに気がついた。
Image Syncの転送速度上昇 小技
実はK-3III以前からあったっぽい仕様。カメラのWi-Fi機能とImage Syncアプリ経由でスマートフォンに画像を転送する際「撮影モードのまま転送」と「再生モードにして転送」だと後者の方が40〜50%ぐらい速く転送できる。
撮影モードで割かれている演算能力が再生モードだと転送処理に回せるとかそういう仕様なんだろうか?専門外なので理屈はさっぱりだが、実は2019年のGR Officialでも紹介されていた情報。
手元の機材ではK-1II、KP、K-3III、GRIIIで効果があった。多分Image Syncへの転送に対応した全機種共通。
ホワイトバランスのタッチ操作 小技
従来機ではWBのBlue/Amber/Green/Magentaの比率を±0〜7の段階で十字キーから調整できた。
K-3IIIでは±0〜14段階に増え、より細かな調整が可能に。
それだけではなく、WB調整時に表示されるカラーマップはタッチ操作をすることができる。十字キーではグリッドを斜めに移動することができなかったが、タッチ操作であればB/AとG/Mを同時に変更したり、反対側のWBに一気に傾けたりすることも可能。反映のレスポンスも高速化されタイムラグがなくなったので、カラーマップを指でぐりぐりしながらイメージ通りのWBを探ることができるようになった。
Fx押し続け機能 更新
K-3IIIはもともとボタンのカスタム項目が多い機種だが、Fxボタンを押し続けている間任意の設定を有効化する機能がファームウェアアップデートでさらに追加された。公式YouTube動画でも紹介されているが、聞いただけではピンときづらい。
具体的には特定のユーザーAFモードを呼び出したり、プリセットした絞りやシャッタースピードに切り替えたり、測光モードを切り替えたりできる。単に切り替えるのではなく、Fxボタンを離せば元の設定に戻るというところがミソ。常用しないモードに切り替わったまま撮影を再開すると事故に繋がりやすいが、そういった事態を予防しつつ咄嗟の設定変更に対応できる。
筆者はユーザーAFの「オートエリア・AF-C・AFホールドOFF」、もしくはハイライト重点測光を当ててみている。前者は珍しい鳥が咄嗟に頭上を通過するときなどに命中率を上げるための設定。
なお、ひとつのFxボタンで「押す・押し続ける」の2つの操作を割り当てて使い分けることはできない。
AF-C時の測距点追尾方法 Type3 更新
K-3IIIには測距点を選択した上で、被写体が移動した場合に自動で測距点を切り替えて追尾させるモード(セレクトエリア拡大)がある。この機能はAEセンサーの性能が従来の8.6万画素RGBから30.2万画素RGBIrに向上し、被写体認識のレベルが上がったことで実現した。
追尾方法Type1:AFセンサーとAEセンサーの併用で測距点を追尾させる方法
追尾方法Type2:AFセンサーの情報のみで測距点を追尾させる方法
追尾方法Type3:多点AF時にType2よりも選択中の測距点を優先し、測距点の大きな移動を抑える方法
Type1は抜けた背景でカメラが被写体を見失いにくい条件であれば、測距点をフルに使える分自動追尾できる範囲が広いというメリットがある。Type3は選択箇所の周辺の測距点はあくまで補助的に機能するため、ピントを合わせたい位置を自分でコントロールしやすいメリットがある。つまり、カメラ任せで測距点位置が暴れてしまうことを避けるモードと言える。
複数の人物の顔が並んでいてAEセンサーが特定の被写体を選別できないケース、野鳥撮影時に木の枝や花をカメラが被写体と認識して引っ張られてしまうケースではType3が有効とされる。
ピント感度設定 更新
AF-C時、奥行き方向のAF追従感度を5(追従性重視)〜1(安定性重視)まで調整できる設定項目。
ファームウェアが更新される前の感度設定は3(標準)となっている。以下は公式の解説動画の引用。
・いくつかの被写体の測距履歴のサンプルから、次の被写体の位置を予測してレンズを駆動させています。
・サンプル数が多いほど動体予測の安定性は増しますが、サンプル数を増やせば予測演算に時間を要します。
・追従性重視の場合には被写体に積極的に追従するようになり、被写体との距離変動が少なくても追従しようとします。そのため、AFの動作が多くなる場合があります。安定性重視の場合には、被写体との距離変動が少ない場合は追従せずその場に留まろうとします。
「追従性重視」は参照するサンプル数を絞ることでよりAF追従の反応速度が高まる設定。素早く不規則な動体に適しているらしい。「安定性重視」はサンプルをフルに活用することでより確実な移動予測でAFを追従させる設定。こちらは電車や旅客機のように一定速度で移動する動体に適しているとのこと。
「いくつかの被写体の測距履歴のサンプル」というのはやや含みがあり、ディープラーニングの参照を指しているのか、実際にカメラのAFセンサーで測距した直近の履歴を参照しているという意味なのかまで断定ができない文章。ともあれ処理速度優先 or 予測精度優先という理解で間違ってなさそう。
また、従来の似た設定項目に「AFホールド」がある。
AFホールドは被写体との間に障害物があるなどしてセンサーが被写体を見失った場合、即座に測距点の位置にあるもの(例えば障害物)に合焦させるか、被写体を再度認識するまで一瞬待つかを設定できるというもの。ピント追従の鋭敏さという意味では似た項目だが目的は若干異なる。
