PENTAXの特徴 / レンズ編 



PENTAXのメーカーとしての特徴を色々取り上げていく記事のレンズ編。
ミラーレスとは前提とする光学設計が別物になるので昨今どうしても下火の一眼レフ用レンズ。
PENTAXが抱える困難の理由の多くがレンズにあり、同時に魅力もレンズにある。




APS-C用レンズが豊富


2021年頃まではAPS-C機でかなりのシステムを組めるブランドだったのだが、2022年からラインナップが縮小傾向でやや寂しくなってきている。それでもAPS-C用レンズを多く揃えている一眼レフメーカーであることに変わりはなく、小型軽量をコンセプトに掲げるレンズ群が豊富。



APS-C用の焦点距離別レンズラインナップは、中古入手を含めるとざっくりこんな感じ(焦点距離が被っているモデルは統合して記載)

F2.8通しズーム(大三元) 11-18 / 16-50 / 50-135
F4通しズーム(小三元) 12-24 / 16-45 or 17-70 / 60-250

中級ズーム 16-85 / 20-40 / 55-300
キットズーム 18-50 / 18-55 / 50-200
高倍率ズーム 18-135 / 18-250 / 18-270

魚眼ズーム 10-17

マクロ 35

広角単 14 / 15 / 21
標準単 35 / 40
望遠単 50 / 55 / 70 / 200 / 300 / 560

超望遠域は大型になるがフルサイズ用の150-450などがカバーしている。また、フルサイズ対応製品もAPS-Cの機動力を損なわないコンパクトな単焦点( 31 / 35 / 43 / 50 / 77 / 100 )が多い。




高い逆光性能


現代のレンズだと珍しい特性ではなくなってきているが、PENTAXのレンズは古いものも含めて耐逆光性能が高いものが多くゴーストやフレアに悩まされる場面が少ない。例としてTAMRONやSIGMAの2000年代頃までのレンズは逆光性能に難を抱えた製品も多かったが、それぐらいの時期のPENTAXの純正レンズは太陽がフレームインするような条件でもゴーストはよく抑えられていることが多い。これは後補正では出せない発色やヌケの良さにも繋がるので、風景などを鮮やかに撮りたい人は多少古めでも純正レンズを勧めたい。



素人考えでは多層マルチコーティングを早くから取り入れていたことが主因に感じられるが、小型で構成枚数の少ない設計のレンズが多いことも一因かもしれない。7層のsmcコーティングから現代では9層のHDコーティングに進化し、ハイグレードのレンズではエアロ・ブライト・コーティングなどより反射率を抑えたコーティングが施されている。




Limitedシリーズ


看板レンズというと大口径の高性能ラインが頭に浮かぶが、PENTAXではそれとは別に「小型、高品質、官能評価における高性能」を目指したレンズ群が存在する。Limitedというと期間限定品かのような印象を受けるが、この場合には「特別仕様」といった意味合いが強い。

PENTAXのコンパクト設計は近年ミラーレスの台頭で脅かされている長所だが、ユーザーまでもがMTFチャートで比較するような激しい性能競争や機能性の要求からミラーレスもなんだかんだレンズは大型のものが多い。軽量設計の製品は質感や明るさがトレードオフになっていることが多く、鏡筒の質感まで追求したLimitedレンズのコンセプトは案外競合が少ない。(近年のSIGMAのIシリーズもコンセプト的に通じるものがある)



Limitedレンズはフィルム時代後期の1997年に発売された43mmと、後に加わった77mm、31mmの3本でFA Limitedシリーズを成している。独特な焦点距離は区切りのいい既存の数値よりもレンズ設計上の意図を優先したもので、いずれもそのコンパクトさに見合わない描写力を特徴とする。小型だけあって収差が完璧にコントロールされている訳ではないのだが、数値上は取り除くべき収差でも、写りの印象の良さに貢献しているなら敢えて収差をコントロールして活かそうというコンセプトがLimitedシリーズには共通している。



ロングセラーとなったFA Limitedも現代では機能面で遅れを取っているが、防滴・内蔵モーター・クイックシフトフォーカス(フルタイムマニュアル)を備えたD FA Limitedの21mmも新たに登場した。

デジタル一眼レフが普及し出した2005年からスタートしたDA LimitedシリーズはAPS-C向けに更なる小型軽量を突き詰めて設計され、広角から中望遠までパンケーキレンズで構成することも可能。コンパクト設計のレンズというとコストダウンされた樹脂っぽいレンズの印象もあるがDA Limitedの鏡筒はアルミ削り出しの金属鏡筒で統一され、手に取ったときの質感と取り回しのよさを両立した稀有な小型単焦点シリーズとなっている。

シリーズの紹介がメインとなってしまったが、要約すると「小さなハイエンド単焦点シリーズ」のような存在で、コレクション的にもレンズ交換をする撮影体験的にもハマったら地味に抜け出しづらい沼。




★(スター)シリーズ


「妥協なき高性能」を掲げるフラッグシップラインで、他社でいうLレンズ、Sライン、GMレンズなどに相当する。DA・DFAシリーズでは当然ながら全てのスターレンズが防塵防滴。フルサイズ機が発売された2016年以降のレンズは新世代スターレンズとも呼ばれ、特に高い基準で設計されている。一方で初期のDA★レンズなどは問題がないこともなかったのだが、それは問題点の項で述べていきたい。



筆者の場合スターレンズはレンタルのみで所有はしていない。というのも、価格もさることながらボディ込み2kgを上回る機材をほとんど常用しないため。なので説得力にはやや欠けるのだが、Limitedシリーズを紹介した以上は対の存在と言ってもいいスターレンズを載せない訳にはいかない。



防塵防滴を始めとする信頼性の高さ、現代の一眼レフのセンサー性能をフルに活かせる高い解像力、あらゆる状況で自然に描き出されるボケ味。短期間でも実際に使ってみた上で言えるのは、どのレンズも重量に見合った性能があるということ。




Kマウントという規格


PENTAXのKマウントは非常に息が長く、1975年から基本的な仕様を全く変えることなく続いている。約半世紀に渡って発売されてきたレンズのほぼ全てが最新機種と互換性を持っているということを意味する。



もっとも、最近はフランジバッグの短いミラーレス機の方がアダプター経由で使えるレンズの選択肢が非常に多く、見た目的な問題を除けばKマウントボディに拘る必要性は薄まりつつある。

瞬間絞り込み測光や絞り値記録機能のようなオールドレンズ向けの機能が搭載されたのは最新設計のK-3 Mark IIIのみで、それ以外の機種ではMモード時にグリーンボタンを押すことで測光する必要がある。オールドレンズ向けの機能でフルサイズ機がAPS-C機に劣っているというのは惜しいポイントで、時期フルサイズ機が待望される一因にもなっている。




純正レンズが安価



実売1万2000円と1万7000円。これは50mmと35mmの入門単焦点、いわゆる撒き餌レンズの価格。中華サードパーティではなく純正品でこんな感じなのでレンズは比較的お手軽に揃えることができる。

F2.8通し大三元や超望遠といった高額レンズの代名詞のような製品でも10〜20万円の価格帯で、モノによっては他社で揃える場合の半額程度に費用を抑えることができる。先述した小型単焦点シリーズも比較的気軽に手を出せる価格帯なので、複数ある趣味の一部として予算をカメラに割いているユーザー層にとっては手軽にレンズ交換式カメラを楽しむ選択肢としてアリだったりする。2本目のレンズに手を出そう、そしてとりあえず防湿庫を置こう。話はそれからだ。

昨今の情勢を鑑みると製品の値上げは避けられず、安さを売りにするといざ値上げをしたとき買い渋るユーザーしか残っていない状況になりかねないので売る側的には良いこととは言えない……のだが、まあ安くて困るユーザーがいないのも確か。

流石に今後の新製品は値上げが見込まれるので、個人的にはメーカーが運転していくだけの対価はなるべく支払いたいとは思う。過剰な投資は過剰な思い入れや見返りの要求に繋がってしまう側面もあると思うので、何事もほどよいバランスで。




PENTAXのレンズが抱える課題


開発サイクルが遅い

これはボディ編でも書いた通り、シェアの細さ故の長年の課題かつ宿命。2007年頃から登場した超音波式モーター(SDM)駆動のレンズのうち初期型は摩耗のため寿命が短く、部品のアップグレードで対策するも故障しやすいイメージを払拭するには至らなかった。

例としてsmc版のDA★16-50はSDMの故障、方ボケ報告の多さ、開放の癖など上位レンズとしては問題点を指摘されることが多い製品だった。HD版のDA★16-50は駆動方式の変更、光軸の安定性の向上、徹底した高画質化を伴う完全リニューアルを果たしフラッグシップ製品としての名誉を取り戻したが、smc版からHD版への更新には約14年を要した。

1本のレンズを長く売っていると売値も次第に下がってくるので、後継品が出る頃には旧製品の価格が発売時の半額程度になっていることもある。そんな中で旧製品の初値より少し値上げすると、安値に慣れていたユーザーは倍以上値上がりしたかのような錯覚を感じることも多い。やはり開発サイクルは長すぎないに越したことはない。

限られた開発リソースで高品質なものづくりをしている点はむしろ評価されるべきだとは思うが、他社マウント用の新製品が毎年量に出ている中でのんびりと構えていられないユーザーも少なくはない。待っていられるユーザーは新製品が出てもすぐに買わない層だったりするので、やはりサイクルの遅さから悪循環が生まれていることは否めない。


現行品のラインナップが少ない

独自色の強いラインナップはKマウントの魅力だが、一方で他社においてスタンダードなレンズが少なかったりする。特にフルサイズ用レンズの開発は当初のロードマップ通りにはいかなくなっているのが現状。

フルサイズ用のF2.8通しの大三元は2本がタムロンのOEMで構成され、常用レンズとして需要のあるF4通しの標準ズームはフルサイズ・APS-Cともに現行としては無い。アストロ・トレーサーを用いた低感度長秒露光を売りにしているメーカーながら純正では明るい広角単焦点の選択肢が非常に限られており、また超望遠レンズも他社ほど充実はしていない。

純正レンズが比較的安価なのはユーザー目線では良いことだが、大手サードパーティーが撤退してしまったのでお得感でいうと他社とトントンかもしれない。サードパーティー製品はタムロンが2009年、シグマが2014年の発売製品を最後にKマウント用をラインナップから外している。

また、シグマ製レンズには超音波モーター(HSM)やレンズ内手ブレ補正(OS)を搭載したものが多いがKマウント用(とソニーAマウント用)では動作の互換性の問題からこれらが省略されて発売されることが多かった。機構が省略されているモデルもあればそうでないモデルもあり、中古流通品にはOSやHSMの表記が誤って掲載されていることがしばしばある。HSM対応だと思ったらボディAFだった、ということもあり得るのでよく調べておきたい。

タムロンはKマウント撤退後に超広角〜超望遠をカバーする16-300mmを出していたり、シグマからもArt・Sportsシリーズが続々展開されていたり、特に撤退後にK-1が発売されたこともあって「中古でいいからKマウント用があれば……」と思わされる製品がなかなか多い。

ラインナップを欲張ろうとするとネガティブなコメントにはなってしまうが、逆にLimitedのようなラインナップは他社になかなか無かったりするのでKマウントならではの楽しみ方もある。


マイナーアップデートが多い

前項に近い内容だが、コーティングだけを旧製品から変更したものが新製品として発売されることが多い。マイナーアップデート自体はあって困るものではないが、性能の上げ幅がマニアックすぎると感じられることもしばしば。

厳密には絞りの形状も角形から円形に変更されていたりはするので描写特性はもちろん変化するのだが、コーティングに関しては同じ条件で撮り比べて画質の向上が見て取れるもので、色収差や解像力が根本的に大きく改善されるような効果は無い。一方でコーティング更新が増える前の時期では非防滴のレンズにパッキンを追加した防滴化アップデートも多く、こちらは実用度に大きく影響するものだった。

コーティング変更も実用度への影響はもちろんあるのだが、Limitedレンズなどのコーティング更新時に防滴仕様が追加されていれば旧製品からの上方修正としてより意義深いものがあったと感じる。特に、雪国で暮らしていると防滴の恩恵は想像以上に大きい。

開発費なしで完全新規設計をして欲しいというのも酷な話ではある。


基本的にAFが遅い

業界では高速高精度なモーターが続々と開発される中いまなおDCモーターが主流で、静粛性が向上しているとはいえこれはボディ内モーター同じ駆動方式に分類される。モーター非搭載、つまりボディ内のDCモーターありきで駆動するAFレンズも多く、レンズが小型になるメリットがあるもののAF精度的にも動体追従には向いていない。

弁明しておくと他社で主流となっているステッピングモーター(PLM)はPENTAXでも採用されており、動体向けの一部のボディとレンズの組み合わせであれば一眼レフとしてはハイレベルな動体撮影が可能となっている。しかしPLMモーターの採用はわずか2本のAPS-C用レンズに留まっており、高速静粛なAFを搭載したレンズで自由なシステムが組めるとは言い難い状況となっている。

ステッピングモーターを搭載するためにはフォーカス群の軽量化が必須なので、やはり光学系を変更するための開発費なしでモーターを更新して欲しいというのも酷な話ではある。


AF音が大きいレンズが多い

AF速度の問題と共通だが、ボディ内モーター式のレンズはどれも甲高いギア音が発生してしまう。動画撮影に向いていないのはもちろん、ライブ・コンサート系のイベントや飲食店など使用が憚られる場面がしばしばある。近年はシャッター音の小さいミラーレス機が普及したこともあり、大きい動作音がつきもののPENTAXの一眼レフ機はやや肩身が狭い存在となりつつある。

なお、DC・SDM系の内蔵モーターを備えたものであれば動作音が他人の邪魔になることはあまりない。最も静粛性の高いPLMモーター搭載レンズであれば動画撮影時の音声への影響も最小限に抑えることができる。

前述したAF速度の問題も重なり、たとえばズーム・静粛性・AF速度・明るさが同時に求められるライブ撮影のようなシチュエーションだとPENTAXのレンズは非常に選択肢が少ない。




ユーザー目線でも、おそらく開発者目線でもとにかく「開発費だして」としか言えない気がするが、2023年度決算からリコーイメージングは大幅な増収増益で黒字化を果たしている。おそらくリコーブランド製品のGRの売上げとPENTAX製品の生産縮小によるところが大きいのでPENTAXユーザー的に油断できない気持ちもあるが、痛みを伴いつつも収益が改善されている事実は喜ぶべきだろう。

フィルムカメラプロジェクトもとりあえずは成功して部門単体で利益を出せる兆しは見えてきている(と思う)ので、願わくば利益がデジタル製品にも還元されて欲しいところ。