PENTAXの特徴 / ボディ編 



PENTAXのメーカーとしての特徴を色々取り上げていく。
現代では一眼レフを作っているだけで尖った存在なのだが、光る要素はそれだけではない。
光もあれば影もあるということで短所も同時に取り上げるが、まずはボディ編から。








コンパクトな一眼レフ


Kマウントにはフルサイズ、APS-Cともに小型軽量設計を目指した機材が多い。

これはフィルムカメラの時代からの傾向で、プロ機というよりは大衆向けのカメラとして人気を博していた時代が長かった。auto110しかりフィルム後期に登場したLimitedレンズしかり、そしてデジタル化以降もAPS-C機を軸に据えQシリーズも展開させるなど「プレミアムスモール」路線を打ち出していた。


PENTAX K-1 Mark II


スポーツ撮影のフラッグシップ機はキヤノンやニコンの独壇場だったこと、風景写真家向けに645シリーズが展開されていたことから棲み分けとしてKマウントは小型化傾向に至ったと思われる。K-1はAPS-C機より大きいが、それでもライバル機のNikon D810より一回りコンパクトに抑えられている。


PENTAX Q-S1


現代ではスマートフォンやミラーレス用レンズの影響で小型化のメリットが小さくなり、光学性能の水準に追いつかなければならなくなった側面もあるのか、2016年頃からのスターレンズは割と大型化しつつある。





多芸なセンサーシフト機能


現行の一眼レフメーカーとしては唯一センサーシフト式手ぶれ補正を搭載している。

ミラーレスの上位機種ではボディ内手ぶれ補正、さらにはレンズ内補正との協調すら当たり前になりつつあるが、かつてはマウントの互換性さえあれば全てのレンズで手ぶれ補正が効くというのがPENTAXならではの長所だった。



センサーをゆっくり回転させながら長秒露光することで天体追尾を可能とした「アストロ・トレーサー」、ローパスフィルターを廃しながらも必要に応じてセンサーを微動させフィルター同様のモアレ低減効果を選択できる「ローパスセレクター」、ピクセルシフト撮影の最先鋒となった「リアル・レゾリューション・システム」などセンサーシフトの派生機能が豊富なのも特徴。






防塵防滴・動作環境-10〜40℃


PENTAXといえばアウトドア向けのイメージを持つ人も多いかもしれない。結論から言えば、最近の一眼カメラ上位機はどのメーカーでもだいたい防塵防滴に対応している。各社レンズもそこそこ防滴に対応させているので、必ずしもPENTAXだけの強みではない。



しかしながら、エントリー機種と入門レンズの組み合わせでも気軽に防滴システムが組めるメーカーは多くない。動作環境も最低温度-10℃を保証している数少ない一眼カメラでもあり、基本的に耐環境性能が充実しているブランドと言っていい。強いていえば大手サードパーティー製品の世代がおおむね2010年代前半で止まっているので、純正以外だと防滴化できない弱みはある。

防滴対応レンズの一覧
APS-C用

HD PENTAX-DA★11-18mm F2.8 ED DC AW
smc PENTAX-DA★16-50mm F2.8 ED[IF]SDM
HD PENTAX-DA★16-50mm F2.8 ED PLM AW
HD PENTAX-DA 16-85mm F3.5-5.6 ED DC WR
HD PENTAX-DA 18-50mm F4-5.6 DC WR RE
smc PENTAX-DA 18-55mm F3.5-5.6 AL WR
smc PENTAX-DA 18-135mm F3.5-5.6 ED[IF]DC WR
HD PENTAX-DA 20-40mm F2.8-4 ED Limited DC WR
smc PENTAX-DA 50-200mm F4-5.6 ED WR
smc PENTAX-DA★50-135mm F2.8 ED[IF]SDM
smc PENTAX-DA★60-250mm F4 ED[IF]SDM
HD PENTAX-DA 55-300mm F4-5.8 ED WR

HD PENTAX-DA 55-300mm F4.5-6.3 ED PLM WR RE

smc PENTAX-DA★55mm F1.4 SDM
smc PENTAX-DA★200mm F2.8 ED[IF]SDM

smc PENTAX-DA★300mm F4 ED[IF]SDM
HD PENTAX-DA 560mm F5.6 ED AW
フルサイズ用

HD PENTAX-D FA 15-30mm F2.8 ED SDM WR
HD PENTAX-D FA 24-70mm F2.8 ED SDM WR
HD PENTAX-D FA 28-105mm F3.5-5.6 ED DC WR
HD PENTAX-D FA★70-200mm F2.8 ED DC AW
HD PENTAX-D FA 70-210mm F4 ED SDM WR
HD PENTAX-D FA 150-450mm F4.5-5.6 ED DC AW

HD PENTAX-D FA 21mm F2.4 ED Limited DC WR
HD PENTAX-D FA★50mm F1.4 SDM AW
HD PENTAX-D FA★85mm F1.4 ED SDM AW
smc PENTAX-D FA MACRO 100mm F2.8 WR
HD PENTAX-D FA MACRO 100mm F2.8 AW 


コンバージョンレンズ(APS-C用)

HD PENTAX-DA AF REAR CONVERTER 1.4X AW


WR = 簡易防滴 / AW = 防塵防滴
グレーテキスト
は生産完了品
★(スター)レンズは全て防塵防滴仕様
キット用の廉価モデル(L型レンズ)は省略






独自色の強いカラー仕上げ


RAWというより主にJPEGの傾向だが、基本的に発色の鮮やかさを重視している。デフォルトのカラーモード(カスタムイメージ)として「ナチュラル」ではなく「鮮やか」を据えているのが象徴的。


カスタムイメージ:鮮やか


独特な名称をもつオリジナルな色表現も特徴で、色を偏らせつつ瑞々しく3原色を強調する「雅(MIYABI)」、逆に色褪せて乾いた印象を与える「里び(SATOBI)」など方向性は様々。

「風景」「人物」などベーシックなものから「銀残し」「リバーサルフィルム」「Gold」さらには飛び道具として、1カットごとにランダム生成する「クロスプロセス」まで手広いコンセプト。実際に常用するのは数パターンに落ち着くが、その数パターンが刺さってPENTAXを使い続ける人もいる。


カスタムイメージ:雅

カスタムイメージ:里び


色表現への拘りはホワイトバランスにも見られる。色の偏りを無くすためのAWBとは逆の概念となる「CTE」、つまりColor Temperature Enhancement = 色温度強調モードが選択でき、敢えてホワイトバランスを傾けた写真を表現することができる。

夕焼けにあてがうセオリーのほか、特定のカラーが象徴的なカットでCTEを適用すると面白い反応が起きることがある。ついライブビューで結果を確認したくなるところだが、撮影結果をイメージしながらファインダーを覗く時間もそれはそれで楽しい。


ホワイトバランス:CTE

PENTAXの発色、特にJPEGは鮮やかさ重視の傾向であると最初に説明したが、それだけではなくいい意味で一貫性のない、多様性のある色表現がPENTAXの魅力でもある。カレーがいくら美味しくても365日は食べないし、かといって和食メインで過ごしていても家系ラーメンが食べたくなるときもある。PENTAXはちょっとしたレストラン街ばりに選択肢があるので、個人的には大変居心地が良かったりする。


カスタムイメージ:Gold

カスタムイメージ:九秋


カラーリングの調整はRAW現像に任せるのもひとつの手。しかしPENTAXの撮って出し画像は、カスタムイメージと名付けられただけあってユーザーがプリセットできる項目が豊富。また、他社ではあまり重視されないカメラ内現像機能も充実しており、下手なスマホアプリより画作りを追い込めるのも特徴。


カスタムイメージ作例
鮮やか

人物



ポップチューン

フラット

リバーサルフィルム

クロスプロセス
ナチュラル

風景

里び

ほのか

銀残し

モノトーン

Gold






PENTAXのボディの短所


AF・動体性能が弱い

とにかく言われがちで、改善はあるものの実際否定はしづらい。

AI被写体認識を駆使するミラーレスの台頭でより顕著になり、最初から動体撮影が目的でPENTAXを選ぶメリットはほとんど無い。

しかしながら2021年発売のK-3 Mark IIIの登場で大きく改善され、少なくとも一眼レフとしては並かそれ以上の土俵に上がることができた。ただしこれはPLMモーターを採用しているレンズと組み合わせた場合の話で、PLM採用レンズが現状2本しかラインナップされていないため相変わらず動体機としての評価は芳しくない。

といっても、野鳥やスポーツのように一瞬のシャッターチャンスが勝負になる撮影では確かにコンマ秒のAF性能が重要となるが、あまり動かない被写体や風景がメインであればそこまで気にする必要もない(もちろん良いに越したことはないのだが)。日常の撮影で差が出るとしたら、動き回るペットや子供を撮影する状況だろう。なかなか百発百中とはいかない。

フォローが難しいのはバッファ性能、特にフルサイズ機。動作が遅めなのに加えて、連射機能を使わなくてもバッファが詰まるケースがあるので改善は強く望まれる。


AF性能が低いと言われるK-1IIでも、過度な期待をしなければぼちぼち撮れる。


純正現像ソフト(DCU5)が使いにくい

先に書いておくと、純正現像ソフトのDCU5はインストールしておくのが吉。RAWデータからメーカーの画像仕上げを反映したJPEGを出力する作業は、Lightroomなど他社製ソフトではできない作業。クロップ、ノイズ処理、tiff出力、とりあえずそれなりに一通りの作業をこなすことが可能。

しかしながら、過去に触ってきた画像処理ソフトの中ではトップクラスに扱いにくい。直感的ではないUI、数値を入力できないスライダー、編集結果の反映に時間がかかるうえ完全に反映される前に別の操作を加えると直前の操作が意図せずキャンセルさせる問題などなど……しかも、カメラ内RAW現像では可能なデジタルフィルター等の効果がDCU5では適用・編集できない。やはりメインの環境はLightroomで、DCU5はたまに引っ張り出してきたRAWからJPEGを書き出す役割に留まっている。

サポートは手厚く、問い合わせ先に不具合や操作方法を確認すると中の人が丁寧に返信してくれる。カメラの新機種や新ファームにも対応して適宜アップデートは続いているし、開発が続いているだけ感謝の気持ちもある。ソフトに莫大な予算を投じてカメラ開発が止まっては本末転倒だし、うるさく言うのは野暮かもしれない。ただ、できればLightroomのカメラプロファイル対応カスタムイメージの種類を増やしてほしい。これはAdobeに言うべきなのか。



周辺機器の充実度がいまひとつ

主にストロボ関係。

比較的ライトなカメラ趣味であればボディ1台とレンズ1〜数本を揃えれば満足という人が大半だし、それらの機材にも様々なシチュエーションに対応して長期間楽しめるだけのポテンシャルはある。PENTAXで不自由を感じやすいのはストロボ関係で、もちろん純正の防滴クリップオンストロボもある(あった)のだが光学スレーブ発光にしか対応しておらず、ラジオスレーブで自由度の高い多灯ライティングを組めない問題がある。純正ストロボのラインナップも(この項の執筆時点で)ガイドナンバー18の小型クリップオンストロボ以外はディスコンとなっており、中古品でしか入手ができない。

ワイヤレスシステムや光量の問題はGodoxから出ている製品で一応解決可能ではあるが、他のサードパーティー製品はPENTAX用を出していないため心細い状況であることに変わりはない。

他にはバッテリー蓋の位置に対応したアルカスイス互換の専用L型ブラケットなども近年は販売されなくなった。最初に書いた通りボディとレンズまでで問題ないユーザーにとってはあまり関係がない話だが、撮影目的によっては痛手になり得るので最初に確認しておきたいポイント。



開発サイクルが遅い

シェアも売上も低いため開発予算が少なく、開発予算が少ないので新製品がなかなか出ない。出たとしても前モデルのマイナーチェンジや派生機だったりする。これはレンズにも言えることで、古いレンズのモデル更新がなかなかされないことも含めて新しもの好きの人はストレスに感じやすいかもしれない。

母体のリコーは大きいけどメイン事業は苦戦気味のようで、リコーイメージングも長いこと赤字続きだったし財布の紐が固くなるのは致し方ない。それでもこれを書いている2024年は着実に過去の負債を消化している模様。

個人的には……フルサイズ後継はいつかは出してほしいけど、まずは細々でも生産が続いてくれたら御の字という気持ち。ニッチな市場の開拓に明け暮れるのでオリジナリティこそ尖ってゆくが、万人受けからは離れていくので逆転のヒットもなかなか難しい状況が10年ほど続いている。かに思われたが、フィルムカメラプロジェクト第1号のPENTAX 17は発売から数カ月間、増産するまで供給の目処が立たなかったほどのヒットぶりで好調な様子。

その調子だPENTAX、うまいことデジイチの予算もぶんどってくれPENTAX。応援してます。


眠れる獅子。


その他

難点のほとんどは開発予算の少なさと製品サイクルの遅さに原因が集約されるので、正直そこを言ってしまうと他に言うべきところがない。より具体的に書くならフルサイズ対応のレンズが少ない、AFの駆動方式が古いなど色々あるといえばある。レンズについてはレンズ編で取り上げたい。